東京地方裁判所 平成6年(ワ)6109号 判決 1997年6月26日
原告
日本国有鉄道清算事業団
右代表者理事長
西村康雄
原告
東日本旅客鉄道株式会社
右代表者代表取締役
松田昌士
右代理人支配人
榎本龍幸
右両名訴訟代理人弁護士
茅根煕和
同
春原誠
原告日本国有鉄道清算事業団代理人
田口肇
外三名
被告
メトロ商事株式会社
右代表者代表取締役
岡野雅彦
右訴訟代理人弁護士
辻誠
同
河合怜
同
富永赳夫
同
竹之内明
同
三浦修
主文
一 被告は、原告日本国有鉄道清算事業団に対し、別紙物件目録二記載(1)の建物部分及び(3)の建物を収去して、同目録一記載(1)の土地及び(3)の土地を明け渡せ。
二 被告は、原告東日本旅客鉄道株式会社に対し、別紙物件目録二記載(2)の建物部分を収去して、同目録一記載(2)の土地を明け渡せ。
三 原告のその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用は被告の負担とする。
五 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求
1 主文一、二同旨
2 被告は、原告日本国有鉄道清算事業団に対し、金四億二二五五万五三〇〇円及び平成六年四月一日以降主文一の明渡しずみまで、年額金六六一八万三四〇〇円の割合による金員を支払え。
3 被告は、原告東日本旅客鉄道株式会社に対し、金三億二七一八万四九〇〇円及び平成六年四月一日以降主文二の明渡しずみまで、年額金五〇七一万五五〇〇円の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
本件は、日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)を引き継いだ原告らが、その所有にかかる各土地上に建物を所有している被告に対し、本件各土地の所有権に基づき、右建物を収去して右各土地を明け渡すこと及び不法行為による損害賠償として、右各土地の不法占有の日から右明渡しずみまでの使用料相当損害金の支払を求めた事案である。
一 争いのない事実等(証拠によって認めた事実については括弧内に証拠を掲げた。)
1 原告日本国有鉄道清算事業団(以下「原告事業団」という。)は、昭和六二年四月一日、日本国有鉄道改革法(昭和六一年法律第八七号)に定める国鉄の改革の実施に伴い、国鉄の債務の償還、土地その他の資産の処分等を適切に行い、もって同法に基づく施策の円満な遂行に資することを目的として、国鉄から移行した特殊法人であり、原告東日本旅客鉄道株式会社(以下「原告会社」という。)は、同日、同法に基づき国鉄の事業等を引き継ぐ承継法人の一つとして設立された株式会社である。
2 別紙物件目録一記載の各土地(以下「本件土地」と総称する。)は、もと国鉄が所有していたところ、昭和六二年四月一日、同目録記載(1)の土地(以下「本件(1)の土地」という。)及び同目録記載(3)の土地(以下「本件(3)の土地」という。)は、原告事業団が、同目録記載(2)の土地(以下「本件(2)の土地」という。)は、原告会社がそれぞれ承継取得した(甲三の一、二)。
なお、被告は、本件(2)の土地について、原告会社の承継取得を否認し、原告会社が登記名義を有していないことをもって、被告に対抗できないと主張するが、本件において、被告と原告は対抗関係に立っていないから、被告は登記の欠缺を主張しうる正当な利益のある第三者ということができず、主張自体失当である。
3 国鉄は、被告からの出願により、昭和四八年三月三一日、旅客構内営業規則に基づき、被告に対し、次のとおりの条件で、秋葉原駅構内営業の承認(以下「本件営業承認(1)」という。)をした。
(一) 営業種目及び種類 店舗営業(第二種店舗営業)
(二) 承認期間 昭和四八年四月一日から昭和四九年三月三一日まで
但し、期間満了前三〇日までになんらの通知をしないときは、期間満了の日の翌日から起算して一年間継続して有効とし、以後毎年この例による。
(三) 土地の使用 三一二平方メートル
(四) 構内営業料金 国鉄が別途指定する。
(五) 承認の取り消し等
国鉄が業務上必要あると認めたときは、承認事項の変更、承認の取り消し及び営業停止を行うことがある。この場合、国鉄は、営業者が損害を受けても補償しない。
営業者は、構内営業の承認を取り消されたとき、構内営業の廃止を受けたとき、またはその承認期間が満了したときは、国鉄の指示により営業施設の撤去及びこれに関連する国鉄施設物の改造等、必要な措置を講じなければならない。この場合、これに要する費用はすべて営業者の負担とする。
4 被告は、旅客構内営業規則の定め及び右条件を承諾した上で、本件(1)及び(2)の土地上に別紙物件目録二記載(1)及び(2)の建物(以下「本件建物」という。)を建築し、そば店「信州」、寿司店「すし丈」、喫茶店「喫茶メトロ」の営業を行ってきた。
5 国鉄は、被告からの出願により、昭和五二年一〇月一日、旅客構内営業規則に基づき、被告に対し、次のとおりの条件で、秋葉原駅構内営業の承認(以下「本件営業承認(2)」という。)をした。
(一) 営業種目及び種類 店舗営業(第二種店舗営業)
(附帯施設仕込室兼倉庫)
(二) 承認期間 昭和五二年一〇月一日から昭和五三年三月三一日まで
但し、期間満了前三〇日までになんらの通知をしないときは、期間満了の日の翌日から起算して一年間継続して有効とし、以後毎年この例による。
(三) 土地の使用 一一平方メートル
(四) 構内営業料金 八万九八四八円
6 被告は、旅客構内営業規則の定め及び右条件を承諾した上で、本件(3)の土地上に別紙物件目録二記載(3)の建物を建築し、仕込室兼倉庫として使用してきた。
7 国鉄が定めている旅客構内営業規則によると、旅客構内営業料金には固定財産の使用料金を含むとされており店舗面積が一五平方メートルを超える第二種店舗営業の場合は、売上総額に一定の営業利率を乗じた額と固定財産使用料相当額とを比較してその高い方を営業料金としている。本件では、売上総額に一定の営業利率を乗じた額の方が固定財産使用料より高いので、被告は国鉄に対し、前者の額を次のとおり支払った。
(一) 昭和四八年四月一日から昭和六二年三月三一日までは、国鉄から半年毎に発行される請求書に基づいて六か月分をまとめて支払った。
(二) 昭和六二年四月一日以降は、平成八年三月三一日まで、半年毎に六か月分をまとめて弁済供託した(乙一四の一ないし一八)。
8 本件営業承認(1)及び(2)(以下「本件営業承認」という。)は、3及び5の各(二)ただし書きにより昭和六二年三月三一日まで継続したが、国鉄は、同年二月二五日、書面をもって本件営業承認を同年三月三一日をもって終了させる旨の意思表示をし、右書面は、同年二月二六日頃被告に到達した。
三 争点
1 国鉄、原告らと被告との間の本件土地使用契約は、建物所有を目的とする旧借地法の適用のある賃貸借か。
2 1が認められる場合に、右使用契約は、一時使用を目的とするものか。
3 本件土地の賃料相当損害金の額
四 争点についての当事者の主張
1 争点1について
(原告ら)
被告が本件土地を使用し得たのは、国鉄の被告に対する本件営業承認に基づくものであり、本件営業承認は賃貸借契約とは異なる一種の無名契約と解すべきである。
すなわち、第一に、構内旅客営業承認は、土地の使用収益を主たる目的、内容とするものではなく、構内営業をめぐる権利義務関係を定めた契約であり、構内営業に必要な範囲で土地の使用を認められたとしてもそれはあくまでも承認された営業権を行使するに必要な限度で許されているもので、当該営業権なくしては存立し得ないといういわば付随的、従属的な効果によるものであるから、土地の賃貸借契約には該らない。
第二に、国鉄は、昭和二四年六月一日、日本国有鉄道法により設立された法人で、従前国が日本国有鉄道事業特別会計をもって経営していた鉄道事業その他一切の事業を国から引き継いで経営し、能率的な運営によりこれを発展せしめ、もって公共の福祉を増進することを目的としていた(日本国有鉄道法第一条、第二条)。したがって、国鉄の事業そのものの公共性は従前国が経営していたときと変わらないので、国鉄の財産は形式的には国有財産ではなく、国有財産法の適用はないが、実質的には国有財産と異ならない性格を有するものというべきであり、駅構内の土地のような事業用財産を第三者に使用させる場合は、その本来の用途又は目的を妨げない限度においてのみ使用収益させる必要があり、そのために旅客構内営業規則では、国鉄が業務上必要があると認めたときは営業施設の移転撤去などをさせることができる等公共性に由来する規定を置いているのである。
(被告)
被告が本件土地に本件建物を建築するに当たっては、願い書に鉄筋コンクリート造ないしは鉄骨造であることが明示された基本設計図を添付しており、国鉄は、これを前提として本件営業承認をしたものである上、その詳細設計及び施工に当たっては、国鉄の指導監督(監修ないしは立ち会い)を受けており、国鉄が、被告において本件土地に本件建物を建築することを承認していたことは明らかである。
本件においては、右承認が構内旅客営業承認という形式でされているが、営業施設としての建物を建築するため、その敷地として本件土地の使用を被告に承認したことは明らかであって、これによって国鉄と被告との間には、建物所有を目的とする土地使用契約が成立していることは疑う余地のないところである。
2 争点2について
(原告ら)
(一) 本件土地は、秋葉原駅構内の広範な土地の一部であり、それ自体では公道に接していない。本件土地は、駅施設に隣接するものであるが、このうちの相当部分はコンコース並びに駅の清算事務室として現に使用されており、被告はその地下部分のみを使用している現況にある。本件土地が、駅構内という鉄道事業の用に直接供されるものであることは客観的に明らかであり被告もこのことは十分認識していたものである。
(二) 本件営業承認はすべて被告からの積極的な出願に基づいて行われたのであり、且つ、被告は、長年構内営業を行ってきた者として構内旅客営業承認の内容を十分に承知の上で本件営業承認を受けたものである。
(三) 構内旅客営業承認は、その承認期間は、一年以内に限られており、前記一3の(五)に記載したとおりの承認の取り消し等の規定がされている。これは、鉄道事業の公共性に鑑み、その適正な発展が阻害されることのないように配慮されているからであり、事業用の固定資産を構内旅客営業承認当時、直接鉄道事業に利用していない場合であっても将来事業上必要とする事態が生じた場合は、いつでも原状回復して鉄道事業のためにこれを使用し得ることが強く要請されているからに他ならないのである。
被告は、右規則の内容を十分に承知した上で出願し、承認を受けた。このことは、被告の前身ともいうべき株式会社ドミノの時代に旅客構内営業規則に従い新宿駅ビル建設の際に立ち退き、さらに被告としても、昭和四〇年二月の神田駅改造の際に喫茶店の半分及びそば店の全部の撤去を行っていることからも明らかである。
(四) 本件建物の構造については、鉄筋コンクリート造ではあるが、国鉄は長期の使用を認めたわけではない。
被告が本件営業承認の契約内容を熟知しながら本件建物建築に及んだのは、いつ明け渡しを求められるかも知れないという危険性と営業を拡大することによって得られる利益の大きさとを天秤にかけた上での経営判断によるものである。被告は、本件建物の建築資金を銀行から借り入れているが、本件建物での業績は良く、昭和六一年には右借入をすべて完済している。
したがって、本件建物の構造は、本件営業承認が一時使用を目的とするものであることを阻害する要素とはならない。
(五) 国鉄は、本件営業承認を行うに当たり権利金、敷金を受領していない。
(被告)
(一) 本件営業承認書(乙一〇の一)には、国鉄の業務上の必要に基づく営業施設の撤去及び無補償についての記載はない。本件営業承認には期間が定められていても、本件土地についての使用期間の定めはない。
仮に本件営業承認の期間が借地期間と解されるとしても、強大な権力を有する国鉄と零細な構内営業者に過ぎない被告との力関係から、堅固建物の所有目的であるにもかかわらず、一年あるいはそれ以下の期間と立ち退きの場合の無補償が定められたものであって、現実の借地関係の実態が反映しない例文になっているものである。
(二) 本件営業承認当時、本件土地を鉄道事業のために使用する計画は全く存在しなかったことは明らかであり、将来事業上必要とされる事態が生じ得るという程度の漫然かつ抽象的な事情は、一時使用を認める根拠となり得ない。
(三) 本件土地は、本件営業承認当時において、非事業用地であったことは、登記簿上本件土地が雑種地として登記されていたことから明らかである。また、国鉄の行う業務は公権力の行使を本質とするものではなく、私法規定が適用されるのが原則であるから、本件においては、事業の公共性は、一時使用の理由とはならない。
(四) 被告は、本件土地については、堅固建物所有を目的とするものであったから、本件土地を永続的に使用できると認識していたものであり、本件土地は旧河川敷であって、何ら使用することなく放置されていた土地であったことから、国鉄が将来本件土地を事業に使用する必要がある可能性など全く認識していなかった。
本件営業承認の期間は、構内営業料金の据え置き期間として認識していたものである。
3 争点3について
(原告ら)
本件(1)及び(3)の土地の使用料相当額は、別紙使用料相当額一覧表(1)記載のとおりであり、本件(2)の土地の使用料相当額は、同表(2)記載のとおりである。
したがって、昭和六二年四月一日から平成六年三月三一日までの使用料相当損害金の合計額は、本件(1)の土地については金四億四一七万二二〇〇円、本件(2)の土地については金三億二七一八万四九〇〇円、本件(3)の土地については金一八三八万三一〇〇円である。
(被告)
原告らは、原告事業団の土地等貸付基準規定及び原告会社の不動産貸付規定によって本件土地を第三者へ新たに貸し付ける場合の使用料を算出し、本件土地の使用料相当損害金であると主張するが、賃貸借契約終了後引き続き目的物を占有する賃借人が支払うべき賃料相当額は従来の賃料であると解すべきである。
第三 争点に対する判断
一 証拠(甲一、二、四、二一、乙六、乙七、八の各一及び二、九の一ないし三、一〇の一及び二、一一、一八、一九証人妹尾健二、池上信雄)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
1 本件土地は、JR総武線秋葉原駅東口(昭和通り口)駅改札と昭和通りとの間のコンコース(通路)の改札口寄り北側に接する場所(一部はコンコースの下)に位置しており、それ自体では公道に接していない。
本件土地付近は、昭和三〇年頃まで神田川の支流の運河であったが、その、当時この運河を跨ぐ形でコンコースが設置され、その後この運河が埋め立てられたものであり、そのためコンコースの下は空洞になっていた。
なお、本件土地の地目は、登記簿上、雑種地であったが、昭和六一年五月七日鉄道用地に変更された。
2 本件土地は、昭和三九年頃、駅のごみ捨て場や水飲み場としてその一部が使用されていたところ、被告の前身である株式会社ドミノの代表者岡野峰一(以下「岡野」という。)は、本件(1)、(2)の土地の一部に店舗を作ってコンコース側に出入口を設けることを計画し、昭和三九年一二月、国鉄に使用願いを提出し、昭和四〇年二月一八日構内旅客営業承認を受け、約六五平方メートルの軽量鉄骨造りの建物を建築し、そば店の営業を開始した。
3 右そば店の営業は順調に推移したが、出入口が改札口の内側に設置されており、外部の一般客が利用することができない構造になっていたため、岡野は、出入口を改札口の外側に設置し、併せて店舗の地下を有効に利用するため喫茶店を新設することを計画し、資金の都合で被告が株式会社ドミノの営業を引き継ぐことになった。
4 被告は、昭和四五年一〇月三〇日付書面で、土地の使用面積150.7平方メートル、建物面積地下一階104.4平方メートル(鉄筋コンクリート造り)、地上一階147.7平方メートル、地上二階128.4平方メートル(鉄骨造り)とする建物改造並びに喫茶店新設に伴う営業願いを国鉄に提出し、昭和四六年一月二六日、第二種店舗営業、土地の使用、営業施設(建物)の設置等を内容とする構内旅客営業承認を受けた。
5 被告は、昭和四六年三月一二日付書面で国鉄に対し営業施設の変更を願い出、同年六月一二日、土地使用面積二一一平方メートル、建物面積地下一階196.6平方メートル、地上一階150.9平方メートル、地上二階128.4平方メートルとする営業施設改定の承認を受けた。
6 被告は、昭和四八年一月一六日付書面で再度国鉄に対し店舗営業施設の増改築を願い出、本件営業承認(1)を受けた。この承認によって被告は本件(1)及び(2)の建物を建築した。本件土地の半分近くはコンコース及び駅の清算事務室として使用されており、この部分については、被告は、地下部分のみを使用している。
7 右2、4、5の各構内旅客営業承認及び本件営業承認は、いずれも承認の条件として、日本国有鉄道構内営業規則の定めるところによると定めている。右構内営業規則には、営業者は、国鉄の承認により構内営業に必要な限度で国鉄の土地を使用して営業施設を設けることができるが、予め施設の設計図、仕様書等を提出して国鉄の承認を受けなければならない(五条、八条)、構内営業の承認期間は一年以内とする(六条)、国鉄は業務上必要があると認めたときは、営業施設の移転、変更、修理又は撤去をさせることがあり、この場合これに要する費用は営業者の負担とする(九条)、営業者は、構内営業の承認を取り消されたとき又はその承認期間が満了したときは、その費用負担によって営業施設を撤去するなど必要な措置を講じなければならない(一〇条)等が規定されている。
なお、国鉄は、本件使用承認をするに際して、敷金、権利金等は受領していない。
8 被告は、本件建物の建築に当たっては、秋葉原駅長、上野菅財区長等の指示監督を経てすべての工事を実施した。本件建物の建築費は、約一億円以上を要したが、被告が銀行からの借入等により全額負担し、右借り入れは昭和六一年までに全額返済した。
9 国鉄は、国鉄の分割・民営化に伴って制定された国鉄改革法により、本件土地の一部が鉄道用地として原告会社に、一部が債務償還対応地として原告事業団に分割されることが決定したため、昭和六二年二月二五日、被告に対し、本件営業承認を終了させるとの通知をした。
二 右認定事実及び前記当事者間に争いのない事実等を前提として、争点について判断する。
1 争点1について
国鉄と被告との間の本件土地の使用契約については、構内旅客営業承認という形式で利用の承認がなされているが、被告は、当初から本件土地に本件建物を建築し、本件建物においてそば店等を営業することを計画したうえで、本件建物の基本設計図を添付した願い書を提出したものであり、国鉄は、これを前提として本件営業承認をしていること、本件建物の建築に当たっては、秋葉原駅長、上野菅財区長等の指示監督を経てすべての工事を実施したことから、国鉄が、被告において本件土地に本件建物を建築することを認識したうえで本件営業承認をしたことは明らかであるから、建物所有を目的とする土地使用契約であるというべきである。したがって、旧借地法の適用のある契約であると解するのが相当である。
国鉄の事業が公共の福祉を目的としていることは、右認定を妨げるものとはいえない。
2 争点2について
本件土地は、JR総武線秋葉原駅東口(昭和通り口)駅改札と昭和通りとの間のコンコースの改札口寄り北側に接する場所に位置しており、それ自体では公道に接していないこと、本件土地の半分近くはコンコース及び駅の清算事務室として使用されており、被告は、この部分については地下部分のみを使用しているにすぎないこと及び構内旅客営業承認という形式で契約が成立していることからすると、本件土地は、雑種地として登記されてはいたが、駅構内という鉄道事業の用に直接供されるものであることは客観的に明らかであり、被告もこれを認識していたものということができる。
また、本件営業承認はすべて被告からの積極的な出願に基づいて行われたものであり、被告は、長年構内営業を行ってきた者として構内旅客営業承認の内容を十分に承知の上で本件営業承認を受けたものであると認められるから、本件営業承認に定められている本件土地の使用期間が例文であると解釈することはできない(被告は、本件営業承認には本件土地の使用期間の定めはないと主張するが、前記のとおり、本件営業承認は、本件土地に本件建物を建築し、本件建物において営業をすることの承認であるから、本件土地の使用期間も併せて定めたものというべきである。)。
本件営業承認において、その使用期間及び使用目的とも限定されているのみならず、国鉄において必要と認めるときには返還すること等の条件が付されていること、本件土地の位置・構造関係からすると、駅舎の改造、駅設備の変更・新設等の必要が生じた場合には、直ちに鉄道事業の用に供される必要性が高い場所であること、本件土地上に建築する建物についても増改築の都度、予め施設の設計図、仕様書等を提出して国鉄の承認を受けて建築していること、使用承認の期間が終了する度に一年間の期間で更新がされてきたこと、本件営業承認及びその更新に当たり権利金、敷金及び更新料の授受がされなかったこと等、以上の事情を総合的に考慮すると、少なくとも当初の本件土地の使用契約においては、一時使用目的とする合意が成立したということができ、更新を重ねて結果的に契約が長期にわたったとしても、その後当初の一時使用の合意が変更されたとまでいうことはできない。
被告は、本件営業承認の期間は、構内営業料金の据え置き期間として認識していたと主張するが、本件における営業料金は、売上総額に一定の営業利率を乗じた額で計算されていたことが当事者間に争いがないことから採用できない。
確かに、本件建物は鉄筋コンクリート造ではあるが、本件営業承認は、いずれも承認の条件として、日本国有鉄道構内営業規則の定めるところによると定めており、被告は、その契約内容を熟知しながら本件建物建築に及んだのであり、本件土地は、その位置関係から高い収益率が見込まれ、比較的短期間で投下資本の回収が期待できるところから、被告は、営業を拡大することによって得られる利益の大きさを考慮し、明渡しを求められるかもしれない危険性を認識しながら、長期間の本件土地の利用を期待して本件建物を建築したものと認められる。したがって、本件建物の構造は、前記認定の妨げとはならないというべきである。
3 争点3について
賃貸借契約終了後引き続き目的物を占有する賃借人が支払うべき賃料相当額は、原則として、従来の賃料であると解すべきであり、被告は、昭和六二年四月一日以降平成八年三月三一日まで、半年毎に六か月分をまとめて従来の使用料の計算方法により算出した金額を弁済供託している。なお、同年四月一日以降の使用料相当額は、これを算出できる資料がないので算定できない。
三 よって、原告らの請求を主文一、二掲記の限度で認容し、その余は棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官一宮なほみ)
別紙<省略>